第一次6月6日〜6月16日、第二次11月14日〜11月24日、第三次1月22日〜1月31日の3回の現地調査を行った。第一次調査では継続的に行っているテッセラ欠落部の点検、各図像における色彩分析調査を行った。ラヴェンナ国立博物館が収蔵する1900年代初頭にコッラド・リッチが行なった調査記録の資料を閲覧した。モザイク表面に付着している埃を採取し、物質の分析調査を行なった。第二次調査では放射温度計による内壁と外壁の温度調査を行った。テッセラ欠落個所と亀裂箇所のマクロ撮影を行なった。オリジナルと各修復箇所の図像(葉、葡萄、装飾等)の実測調査を行なった。テッセラの一部の採集を行ない、これらは現在、金箔の金の含有量、ズマルトの主材料であるガラスと各色素の科学組成調査を行なっているところである。第三次調査では廟内に足場を設置し、以下の初動的な修復作業を行なった。 (1)金箔ガラスの劣化状態及びテッセラとモルタルの状態を調査した上で、ルネッタ及びヴォールトの埃の除去作業を行った。この作業は、刷毛でコーニスや窓の朝顔口、モザイク表面に付着した埃や蜘蛛の巣を落とすもので、予備的な修復作業である。汚れを完全に除去するには更に洗浄剤による洗浄作業が必要である。また、作業工程において触診により落下させた金箔テッセラの皮膜ガラスは、最終的な洗浄作業終了後に元のテッセラ上に貼り直す。(2)ヴォールトにおいて1970年代の修復で使用したセメントモルタルの劣化が進行し、テッセラが落下する危険箇所があることを確認した。これらの調査結果に基づき今後の修復の具体的な作業を検討していく。今回の一連の作業中、古代修復に彩色した石灰石が含まれていることと19世紀後半に行なわれたキーベルの修復の彩色が完全には洗い落とされず、青色や黄色の顔料が付着する複数のテッセラが存在することを新たに確認した。研究室で作成していた鹿と木の葉文の模写図版の色彩補正作業を行ない完成させた。廟内部の温湿度計による環境調査は継続的に実施している。
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