第一次5月29日~6月6日、第二次12月12日~12月29日の2回に渡り現地調査を行った。さらに8月1日から12月15日の間、イタリア人研究協力者によってモザイク壁画の修復作業が行われた。第一次調査では温湿度計のデータ収集を行った。大学研究室で制作していた模写図版をガッラ・プラチディア廟内部に持ち込み、足場上で色彩の補正作業を行った。今回の作業で5年間続けてきた6枚の全ての模写図版は完成した。また、モルタル及びテッセラの成分調査の為サンプルを採取、帰国後モルタルに付着している顔料成分と色彩の調査、およびテッセラの色彩との比較調査を行った。この分析作業により当時、アフレスコに使用した顔料成分やガラスの化学組成、ガラスの着色成分を解明した。8月1日から共同研究者クラウディア・テデスキが中心となり、修復士国家資格を持つイタリア人研究協力者4名により修復作業を開始した。修復項目は金箔ガラスの補修、ルネッタ及びヴォールトの洗浄作業、劣化モルタルへの樹脂の充填、落下の危険のあるテッセラの補修、等である。第二次調査では修復箇所の写真撮影、修復前と修復後のモザイク表現上の相違点を比較分析した。また、プーリア州エニャーツィアの海岸に残るローマ時代の石切り場跡を視察し、当時の石材の切り出し技術と流通経路について資料を収集した。エルコラーノではローマ時代の舗床モザイクを視察し、建物内部における光とモザイク表現の関連性について考察し、ガッラ・プラチディア廟内部の微光のモザイクに与える効果を検証した。エルコラーノに残る1世紀頃のモザイクと5世紀に作られたガッラ・プラチディア廟モザイクを比較研究することにより、ローマ時代のモザイク表現における光の効果と建造物との関係を総括的に研究した。
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