最終年度となる本年度は、材料の科学分析調査の継続と模擬構造壁の制作を行なうとともに、現在まで行なつてきた分析、統計、実験結果を整理し、公表することを主たる活動として行った。現地調査として5月にローマ時代より採石が行なわれているカラーラにて、モザイクの材料として使われる大理石の伝統的採石技術の視察を行い、ラヴェンナモザイク修復専門学校において研究資料の整理と研究報告書作成のためイタリア人研究協力者と協議を行なった。 それから、これまでのガッラ・プラチディア廟モザイク壁画の研究成果を発表する場として「モザイクの真実-世界遺産ガッラ・プラチディア廟モザイクの保存と修復」と題した展覧会を2010年11月3日がち11月20日まで東京イタリア文化会館において開催した。展覧会では作成した調査資料(模写図版、ドローイング、写真資料、科学分析資料等)を展示するほか記録ビデオを上映した。 また、同展覧会開催期間中の8日と9日の2日間、同館においてシンポジウムを開き、調査研究結果の報告と研究の意義について意見交換をした。シンポジウムには、イタリアから研究協力者チエッティ・ムスコリーノ(ラヴェンナ国立博物館館長)、クラウディア・テデスキ(ラヴェンナモザイク修復専門学校教授)、アントネッラ・ラナルディ(ラヴェンナ建築文化財景観局局長)以上3名を招聘し、日本側は研究代表者工藤晴也の他、青柳正規(国立西洋美術館館長)、越宏一(東京芸術大学名誉教授)がパネラーとして参加した。 このようなかたちで我が国において一般にはなじみの薄い初期キリスト教美術の意義とすばらしさを広く社会に紹介する機会となった。
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