研究課題/領域番号 |
20402008
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鮎京 正訓 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40126826)
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研究分担者 |
宇田川 幸則 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80298835)
姜 東局 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (80402387)
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キーワード | 郷約 / 比較法 / 法治 / 法改革 / 伝統法 |
研究概要 |
1. 本研究の目的 ベトナムでは、「王法も村の垣根まで」という諺が存在してきたが、これは、一般にベトナムにおける村落の自律性の「強さ」をあらわすものとして理解されてきた。しかし、ベトナム村落を自律性の「強さ」だけの観点から考察することは一面的であろう。村落における自治の存在と、それを自らの支配に適合的なように国家の側が組みこむということとは矛盾することではない。また、郷約は、「改良」され「新しく」されようとも本来的に古い時代に起源をもつものが多く、したがって、それは、今日から見ると「古い」価値原理に立脚している。郷約は、紛争解決における「長老」の支配など、全体的に、古い、伝統的なシステムを是認する規定をもつ場合がある。郷約の歴史的性格を解明することが本研究の目的である。 2. 平成22年度実施の研究 以上の問題を解明するために、平成22年度は、ベトナム、中国、韓国の郷約に関する比較法的研究を、「郷約の担い手」論を中心に考察した。 第1に、郷約は、歴史の中での社会的文脈によって大きくその性格を変えていくものである。本研究では、村の自立性が強調された時代と、中央政府による統制が強化された時代を比較し、郷約が各々の歴史の中でもつ意義を明らかにした。 第2に、郷約を制定した際の構成メンバーはだれか、そしてリーダーはだれか、という構成員の変化に着目していく視点を明らかにした。例えば、韓国の郷約についていえば、両班(ヤンバン)だけか、あるいは、非両班の一般の庶民も郷約のメンバーになっているか、などの検討により、郷約の性格が変化していくことを明らかにした。 第3には、郷約と儒教の関連についてである。一般に儒教は郷約に大きな影響を与えてきたが、個々の指導者の思想により、郷約の中に、儒教的な教えだけではなく、地域自治の伝統的な考えがどのように取り入れられていったのかをめぐる実証的な研究の重要性を解明した。
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