最終年度は、「台湾総督府文書」のうち「臨時台湾土地調査局公文類纂」の調査に区切りをつけ、翻刻の一応のまとめを行った。明治日本が海外に残した近代古文書としての文字情報を学界共通の資産とするため、逐次申請者のホームページに掲載する準備を整えることができた。土地政策を基軸とする台湾の近代化の実相と、土地および旧慣の調査に従事した総督府官員の実像を浮き彫りにすることによって、外地を媒介とした日本の近代法の展開と明治期官僚制の特質に迫るデータを取得した。その過程で総督府の職員録の把握に遺漏があったことから、国立中央図書館台湾分館所蔵の「総督府旧籍」の分析に着手した。しかし、40年間に近い大量の職員録からは、概略こそ把握できたものの細部の検証にはいたっていない。幸い24年度以降において、この部分を対象とする研究課題(基盤研究(C))が採択されたので、併せてより充実した成果を得る途が開かれている。データ処理に追われるあまり、年度内に論考を公刊できず、遺憾の念を抱いている。 当年度の研究経過は、(1)臨時台湾土地調査局公文類纂と、関連する台湾総督府文書の継続調査、(2)清朝時代から形成されてきた台湾の旧慣の実態と総督府による近代化の実相の再構成、(3)総督府の調査活動および立法・施策から見た明治期官僚制の特質の究明、という三項目に集約して調査と分析を続けてきた。年度初めの23年5月1日「古文書検討会」(国史館台湾文献館で開催)で「台湾の近代化と土地法制」と題して研究報告を行い、24年3月12日には真理大学法律学院で「田賦制度から台湾近代化を論じる」というミニ講演を行った。これに先立つ9日、国史館台湾文献館(南投市)で現地研究協力者と本研究の総括となる成果検討会を実施し、成果報告書の準備を完了した。
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