研究課題
アジア諸国では、社会主義経済から市場経済への経済制度の移行、権威主義体制から民主主義体制への政治体制変換等により、各種法制度の整備のニーズが高まった。特に近年、アジア諸国では、労働法制への整備のニーズが高まり、各種国際機関、先進国等から、いわゆる労働法整備支援を受けてきた。一方、このような法整備支援を受けたアジア諸国の労働法制は、独自の発展を遂げようとしつつある。かつて、単なる「飾り窓」にすぎなかったアジア諸国の労働法は、ようやく「実質化」しようとしているのである。特に、労働契約法制に関する進展は著しく、実定法それ自体の整備のみならず、裁判所による判例法理の展開、労働行政の実務的対応、等が見られる。本研究は、以上を背景にして、これまで蓄積の殆どなかったアジア諸国に対する労働法制整備支援のあり方とその「成果」について、本格的な学術調査を行うものであり、とりわけ、労働法制整備支援という観点からの日本の国際貢献の課題を探ること(新しい研究課題への対応)、単なる基準設定にとどまらない、アジアにおけるILOの技術援助活動(国際公正労働基準の現実化としての新しい活動)に目を向けることができること(従来の課題の発展継承)、研究対象国の労働契約法制の現状と課題について解明できること、という意義を有する。2008年度の活動は、大きく分けて、(1)全体メンバーによる共同研究会の開催(2回)、(2)各メンバーによる担当国への実地調査とヒアリング活動、(3)各メンバーによる成果報告という3本柱に集約できる。その結果、各国の最新の状況を把握できたとともに、各国の研究機関、行政機関との研究ネットワーク構築について一歩をすすめることができた。特に、中国、韓国、台湾、マレーシア、シンガポールの研究者等との協力関係、国際アジア労働法学会への協力という点が特筆できる。
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世界の労働 58巻11号
ページ: 2-8
『国公労調査時報』(2008年4月号) No. 544
ページ: 7-10