1、今年度は、勤務校により海外長期研究員としてスタンフォード大学に派遣されたため、申請書提出時点の計画を調整して、海外での調査を米国に集中していた。訪問した研究機関は主として次のとおりである。(1) ハーバード大学。(2) コロンビア大学。(3) プリンストン大学。(4) イェール大学。(5) シカゴ大学。(6) カリフォルニア大学ロサンゼルス校。(7) 米国国会図書館。 2、米国は、占領期の日本の実質的な統治者として同時期の日中関係に密接に関与していたうえ、国共両党の関係文書を数多く保管している。また、米国の学界は中国研究と東アジア国際関係史研究の面において先駆的な役割を果たしている。したがって、上記の諸機関での調査訪問は特に下記の3点で大切な成果を得た。(1) 熊式輝文書、顧維鈞文書や中国共産党関係文書などを閲覧し、沢山の一次史料を入手した。(2) 東アジア国際政治に関わる所蔵文献の概要を確認した上、日本人留用についての先行研究を把握した。(3) 研究者との学術交流を深め、その視点と方法の長所を吸収できた。 3、科研費による研究の成果を世界に向けて発信することに努め、カナダのシンポジウムで「中国国民政府による日本人技術者留用の政策過程」について報告し、米国の大学では「戦後国共両党による日本人の留用と『白団』から見る蒋介石の対日政策」と題する講演を行った。また、カナダにおいては、Queen's Universityでの取材やシンポジウムの機会を利用して、トロント大学などの研究機関も訪問し、情報発信と学術交流に心掛けた。 4、論文作成の面では、本研究の全般を完成するための要綱と計画をより高いレベルに進展させたうえ、一部の内容を中間成果としてまとめた。これは、2010年に行われる内外の学会で発表することになっている。また、本研究と関連する学術論文も公表した。
|