研究課題
基盤研究(B)
日中戦争の終戦後、中国の国民党支配地域と共産党支配地域において、医者、技師、技官を中心とする多くの日本人技術者は両地域の当局に別々に徴用され、貴い人材として活用され、一部は1950年代に至るまで活躍していた。中国ではこれを「留用」と呼ぶ。本研究は学術調査に依拠して、次の諸問題を中心に総合的な考察を行う。(1)中国全土における日本人留用の基本的な様相を一次資料に依拠して解明するとともに、ケース・スタディーに基づいて、共産党地域と国民党地域という性格の異なる両地域における留用の実態とその相違点を具体的に比較しつつ、それぞれの地域における留用問題の特色を明らかにする。(2)国民党側と共産党側の内部資料に依拠して、「中国の内部評価から見た日本人留用者」という視角から、闇の存在として扱われた彼らに客観的な評価を与えつつ、戦後中国の再編・再生過程に寄与した日本人留用者の役割とそれに基づく中国人の日本観、日本人観を浮き彫りにし、日中関係の多面性を提示する。(3)「日本の人的資源の働き」という新しい視角から東アジアにおける戦後処理問題を再検討し、共産党側と国民党側の戦後構想をより明らかにする。そして、日本人留用の経験と日本人留用者との人脈は戦後日中関係の展開にどのような影響を与えたのか、現在の中華人民共和国と台湾の対日政策にどのような関連性をもたらしたのか、という問題を検証する。
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年報日本現代史 第16号
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中正日記与民国史研究 特集
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日本防衛省防衛研究所『戦争史研究国際フォーラム報告書:太平洋戦争と連合国の対日戦略--開戦経緯を中心として』
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