初年度の20年度は、州制度を支える地方制度一般についての理解を深めるため、イタリアの地方自治制度、州制度について文献調査、および中央省庁その他関連機関に対するヒアリング調査を実施した。これらについては既に研究代表者自身の業績があるが、最新の情報、学説、政治的イシューなどを収集することで更新を図った。具体的には、所管省庁であるイタリア内務省、内閣府公共機能庁、同州問題庁をはじめ、国と州との間の利害調整機関である国家=州会議等に対してヒアリング調査を実施した。特別州についてはまた、国からの機能移譲、財政連邦主義の適用状況などに関し、5州のうち今年度はシチリア州、サルデーニャ州、ブリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の3州を対象に、現地調査によって資料収集、関係者へのヒアリング、実態分析などを行った。ヒアリングは、州、コムーネ(基礎自治体)の他、県庁所在地に設けられている国の出先機関であるプレフェットゥーラ、地方行財政担当の州評議員、学識経験者に対して実施した。また、資料、データ、ヒアリング結果等の分析については、主にイタリア国内の研究者の意見を聴取しつつまとめた。 今年度の成果は主として、第一に、イタリア地方自治制度および州制度に関する文献、資料、データの収集、ヒアリングの実施。第二に、特別州に関する文献、資料、データの収集。第三に、サルデーニャ州、シチリア州、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州に関する文献、資料、データの収集、当該州についての歴史、設立経緯、制度、州憲法、国との関係などのヒアリング調査。そして第四に、イタリアより地方行財政研究者を招き、日本の道州制研究者および地方行政の担い手とのシンポジウムの実施、があげられる。第一から第三までについては後にあげる学会発表論文、雑誌発表論文、書籍の分担執筆論文等において業績を発表し、第四については、来年度に企画中の続編につなげる。
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