本研究は、冷戦期アメリカにおけるアジア研究の動向とアジア地域政策との関係を、フォード財団のアジア研究学術助成を中心に明らかにし、かつそれがもたらした帰結をアジアの側から、また中国の台頭という今日的視点から再検討することを目的としている。当該年度における成果は以下とおりである。 1.フォード財団のアジア研究助成に関して収集した資料を整理するとともに、フォード財団と同様、冷戦期のアジア研究の展開に重要な役割を果たしたロックフェラー財団の中国研究、東南アジア研究に対する学術助成に関する資料調査・収集を実施した。 2.アメリカの対アジア外交戦略について、国務省のForeign Relations of the United Statesを検討するとともに、冷戦期のアメリカ外交問題評議会における対東アジア・東南アジア外交に関わる討論について資料調査・収集を進めた。 3.フォード財団の学術助成とならんでアメリカのアジア研究の展開に研究者の育成という側面から重要な役割を果たしたフルブライト基金について、タイを事例として、タイ国立公文書館に所蔵される一次資料を収集し、その設立の経緯を明らかにする論考を発表した。 4.アメリカ主導で進められた冷戦期の東南アジア研究をポスト冷戦期の観点から位置づけるべく、韓国および中国のアジア研究について資料調査を実施するとともに、特に韓国において進展が著しいベトナム=韓国関係に関する研究を紹介する特集を『東南アジア研究』において編集・刊行した。またグローバル化時代の地域研究の特徴を歴史的かつ現代的に検討し、特にアジア諸地域において実施されている地域研究について比較検討する論考を発表した。 5.2011年4月に開催されるENIUGHで発表すべく、冷戦初期におけるフォード財団およびロックフェラー財団の東南アジア研究助成に関する一次資料に基づく英文論考の執筆を進めた。
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