本研究は、冷戦期アメリカにおけるアジア研究の動向とアジア地域政策との関係を、フォード財団のアジア研究学術助成を中心に明らかにし、かつそれがもたらした帰結をアジアの側から、また中国の台頭という今日的視点から再検討することを目的としている。当該年度における成果は以下とおりである。 1.フォード財団のアジア研究助成に関して収集した資料を整理したうえで、補足調査を行った。また同様にアジア研究の展開に重要な役割を果たした他の財団の中国研究、東南アジア研究に対する学術助成に関する資料調査・収集を実施した。さらに別途進めてきていた冷戦期日本・イギリスにおける東南アジア・東アジア研究に関する資料の補足調査を実施した。その結果、主要な財団が協力/分業して学術助成を行った様が明らかとなった。またアジアの側はアメリカの学術を直接受け入れつつも、個別の状況に応じていわば換骨奪胎していたこともみてとれる。 2.冷戦期アメリカの対アジア外交戦略について、フォードなどの財団関係者も関わった外交問題評議会の討論資料を調査・収集した。 3.フォード財団などから助成金をえて地域研究に従事した東アジア・東南アジア研究者の研究経歴に関して資料収集を実施した。 4.ロンドンで開催された国際学会で、冷戦期アメリカにおける地域研究を比較検討するセッションで初期東南アジア研究に係る成果の一部を発表した。また東南アジアの地域主義に関する研究会で、アメリカにおける東南アジア研究の黎明期をテーマに報告した。その結果、ソ連等で同時代的に展開していた地域研究との比較の重要性も明らかとなり、さらにグローバルな文脈で位置づけを検討する必要性も提起された。加えて東アジアを中心にアジアの地域性と知域文化を論じる論考を発表した。
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