研究概要 |
本年度は,次のような研究を行った. (1)インドの3都市(バンガロール,ノイダ,グルガオン)において,IT企業に対するアンケート調査を行った.言うまでもなく,これらはIT産業の中心都市であり,またしばしば,後発国における革新的な「産業クラスター」の事例として言及されるが,事例研究が中心であって,そこで生み出されるイノベーションの特質と企業間関係,労働市場の特質,能力形成,また担い手人材の育成と管理の実態についての全体像はあまり明らかにされてはいない.本調査によって,こうした点についてはもちろん,経済危機以降の変化について,一定程度明らかにすることができた.特に,インドのITクラスターを「革新的」と評価するのは過大評価である可能性があることが重要な点である. (2)上記調査に関する簡単な分析を行い,いくつかの会議で発表を行った. (3)上記調査を補完するため,デリーにおいてIT中小企業に対する聞き取り調査を行った.主要な焦点は,同地域内での企業間関係,労働力移動,および人材管理の実態把握である.得られた重要な知見は,労働力移動はもとより技術移転でも,地域の大企業が重要な役割を担っており,いわば結節点となっていると言うことである.このことは,上記のアンケート調査でも確認された. (4)昨年度に引き続き,IT産業の発展の背景となる,アジア経済の構造変化のマクロ的分析を行った.
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