研究概要 |
知識基盤型経済発展と呼びうる段階に入ったアジア経済は「イノベーション拠点」ともなりつつある.そうした発展を可能にするグローバルおよびローカルな仕組みを明らかにすることが本研究の当初の目的であった.本研究の特徴は,製造業のグローバル化が発展の原動力となった東・東南アジアとは異なり,サービス業のグローバル化が発展を主導したインドに焦点を当てたことである.それによって,知識基盤型産業発展の最新段階の特徴をより的確に把握できると考えたためである. 研究成果の概要は以下の通りである.第1に,NIEs段階の発展が市場・技術・資本を先進国に専ら求めるものであったのに対し,今日の新興国の発展は,潜在的巨大市場を内に抱えた発展であるため,発展メカニズムも本質的に変容しているというマクロ的構図を明らかにした. 第2に,インド・バングラデシュIT産業を対象に行った聞き取り調査・アンケート調査に基づき,産業高度化の現状とそれを支える知識マネジメントの仕組みについて,人材育成施策について,また輸出指向性とイノベーション指向性の関係について実証的に明らかにした.具体的には例えば,インドIT企業,特にバンガロールに立地する企業においては,多様な外部情報源からイノベーションに必要な情報を取得していることや,長期・内部指向型の人材管理が実施されるようになっていることが分かった.また,世界経済危機後の時期であったにもかかわらず,インドIT産業がさほどダメージを受けていなかったことも明らかにした. 第3に,比較対象として,中国および台湾のIT関連産業の発展メカニズムとの対比を行った. 以上すべての成果は,研究メンバーの共編著Servitization, IT-ization, and Innovation Model (Routledge)として,2013年1月に公刊した.
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