研究概要 |
(1)マイクロクレジット研究 伊藤と高野がインドに赴き、厳密な効果測定が可能なマイクロクレジット機関を探したが、べースライン調査には前向きであるものの、多くの機関がランダム化した実験的介入について難色を示した。本研究分野でのランダム化要素のない実験は、研究としての貢献度が高くない。よって、本研究は取りやめとし、予算を他の2つ(うち、1つは新規テーマ)に集中させることにした。 (2)マイクロ保険研究 本研究では、ベースライン調査を実施した昨年度より引き続き、保険の通常販売と介入的販売・配布を行った。このことにより、逆選択とモラルハザードの効果を別々に識別できる見込みである。現在、途上国のマイクロ保険における逆選択やモラルハザードを実証した研究は皆無であり、マイクロ保険の社会的意義を考えれば、本研究での知見が今後の貧困削減政策に役立てられることが期待される。また、フォローアップの家計調査を実施し、その後の健康状態や保険の認識について情報収集した。これらは実験結果の解釈において有益な参考情報となる。こうした活動を通じ、委託先のBiocon Foundation(BF)と良好かつ強固な関係を築くことができた。 (3)農村医療補助員研究 BFで開始された農村医療補助員(health worker)の訓練および組織化のプロジェクトのべースライン調査を共同で開始した。インドでは、保健の枢要政策の農村保健ミッション(National Rural Health Mission, NRHM)が2005年より全国で展開されている。その中でも、注目を集めつつ成果があやぶまれている農村医療員を、NGOとコミュニティ主体で導入するプロジェクトである。すでに成功裏に展開されている先行事例もあるので、政府プロジェクトよりも成功が見込まれる。本研究では、政策含意が直裁で注目されているプロジェクトの効果を計測し、その改善について提言することを目的としている。
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