本研究は、19世紀末から20世紀中葉にいたる時期の東北アジアを対象として、当該地域における金融インフラストラクチャーの歴史的構造を経済史の視点からあきらかにすることを目的とした。本研究は、当該地域の金融史を直接にあつかいながらも、同時に国際金融システムとの連関を追求し、以って東北アジアにおける金融システムの世界史的位置を展望することを課題に掲げた。本年度は4年間にわたった研究期間の最終年度にあたり、以上の課題を総括し発表することに重点を置いて研究を推進した。 その成果の概要は以下のとおりである。まず西村閑也・赤川元章・鈴木俊夫各氏編著の論集に本研究課題を正面からあつかった論文を掲載することとなった(2012年刊行予定)。この論文では、本研究課題で追求してきた主題、すなわち英系・仏系の国際銀行とロシア系の国際銀行(露清銀行・露亜銀行等)の関係を東北アジアの貿易構造と決済市場、さらには当該諸銀行の経営戦賂や収益構造との関連を通じてあきらかにすることができた。 本年度にはまた研究代表者がオーガナイザーとなって本研究課題を軸に据えた国際研究集会を2011年7月に日本で開催した。この研究集会では、研究代表者は本研究の主題を中国にも拡大し、上海市場における金融インフラストラクチャーと国際銀行の関係を論じた。さらにこの研究集会を基礎に、2012年7月に南アフリカで開催される国際経済史学会大会にセッションのエントリーを果たし、研究代表者がオーガナイザーとして本研究課題のテーマでもある「金融インフラストラクチャー」論を国際比較のなかで検証し、国際的に発信していく端緒が築かれた。
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