本研究は日本における電子商取引普及過程から得られた成長モデルを電子商取引が発展段階にある国に応用し、インターネットの発展が著しいタイ王国を比較対象国として成長決定要因を明らかにした。日本とタイ王国において電子商取引の利用者を対象とした社会調査を行い、電子商取引の利便性とリスクの相関を二国間比較が可能な形で明らかにし、日本との比較でタイの電子商取引の成長モデルを明らかにした。 タイ王国における電子商取引の利用者モデルを明らかにするため、タイ語版のアンケート調査票を作成した。一般的な行動様式を問うための前半部分と、電子商取引に対する利用動向を問うための後半部分から構成され、モックアップサイトを構築してこれを被験者に提示して実際に電子商取引を利用するような意識で回答が得られるよう設計した。 タイ王国における電子商取引の先進的な利用者であるチュラロンコーン大学の学生を対象に教室アンケートを実施し、理工系および社会科学系のサンプルを収集した。日本でも首都圏および地方の大学においてサンプルを収集した。これらを解析し、電子商取引のリスクと利便性に対する消費者受容を国民性および属性との関連において比較分析した。 タイ王国における電子商取引の発展状況に応じて、当初の予定以上に研究対象を発展させた。タイ王国ではポータルサイト型の電子商取引だけでなく、SNSを介したソーシャルな電子商取引市場が先行して普及していることから、SNSコマース利用者の行動様式についても調査し、従来型電子商取引の行動様式との差異を考察した。 タイ王国と日本で得たデータの分析により、二国間比較だけでなく、二国間比較の一般的モデルを構築した。チュラロンコーン大学の研究者と意見交換を行いながら、二カ国のデータ分析および二国間で比較可能なモデルの構築を推進した。研究成果については、タイ側の研究者との共著によって各種の国際会議で発表した。
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