本研究は、平成20年度から平成22年度までの3年間にわたる実証研究である。研究代表者および研究分担者が、北米進出日系企業の管理会計の進化を、環境制約、事前合理性、事後合理性、経営理念、経営哲学および組織風土・文化などの諸要因との相互作用を踏まえて研究してきた。 平成22年度は、北米地域にある日系企業グループの親会社(持株会社)およびその子会社(日本本社にとっては孫会社)の経営管理者に対する調査を行った。事前に両社の社長に質問票を提出し、回答を得たうえで、さらにその回答に対する質問を含めて、インタビューを行った。北米子会社の親会社である北米持株会社、日本本社・事業部との関係やマネジメントについて、買収前から今日に至るまでの実態を把握するためである。北米の持株会社等によるデュージェリデンスのプロセスにおいて、被買収候補の経営状態に加え、組織風土・文化に対する調査が行われ、同グループの目指す組織風土・文化と整合性が高かったこと、北米において買収をする場合には同グループの経営理念に賛同しない会社は買収しないことがわかった。買収後、同グループが推進する経営を実行していると日本本社・事業部に報告していても、実際には本来の趣旨に沿った経営が実行されていなかったことがわかった。日本的管理会計のすべてを実践するのは、北米の経営環境のもとでは困難であるのかもしれない。しかし、実践できる要素もあり、実際に実践されていることを見逃してはならない。 また、平成22年度も、北米で最も大きな子会社の経営管理者(含むOB)および管理会計担当者に対するインタビューを行うとともに内部資料を閲覧した。北米子会社の立ち上げ時から現代にいたるまでのマネジメントの実態と課題を把握した。
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