日系コロニアにおける文化的再生産構造について質問紙調査と聞き取り調査を通して明らかにすることを試みた。ブラジル社会において日系人は高等教育の機会を利用して、やせた大地に入植した貧しい農民から都市の中間層へと地位上昇を果たしてきた。こうした日系人の文化的再生産を、学歴資本、言語資本、およびパフォーミングアーツに象徴される身体的文化資本に着目して分析した。学歴資本に関しては、1世世代の徹底した教育機会の剥奪が明らかになるとともに、教育への憧憬がこども世代の大学進学の原動力であったことが明らかとなった。また、言語資本に関しては、継承言語としての日本語教育が送出国からの援助も乏しく斜陽化してゆく中、Cool Japanの国際的な展開として新たな日本語への関心が高まりつつあることが伺えた。新たな日本語への関心の高まりは文化的再生産とは直線的に結ばれるものではなく、新しい動きとして分析すべき対象であろう。また、身体的文化の再生産としては本土のそれと異なり、琉球の文化においては次世代の積極的な受容が認められた。
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