研究概要 |
平成20年8月にベトナムのハンセン病治療施設2箇所にて治療を受けている患者に対して実態調査を実施、42名から回答を得た。その結果、ベトナムに多剤併用療法(Multi-drug Theory,以下MDT)が導入された1983年以前に発病した群と83年以降に発病しMDTを受けた群を比較してみた場合、前者において障害程度が有意に高く後遺症の治療期間が長期化しているということが分かった。前者の群は高齢化し障害の程度も重いことから社会復帰が困難となっており、結果としてハンセン病村や病院内の障害者棟での生活を余儀なくされているという事実が発見された。それに対し、早期に発見され治療を受けた群は、スティグマ化につながりやすい可視的な身体障害の発生が少なく、社会復帰の面においても大きな支障は認められなかった。現在ベトナムにおけるハンセン病の新規患者発生率は1万人あたり0.07(2006)となっており、WHOの定めるハンセン病削減目標値をクリアーしている。しかし本調査によって明らかになったように、ハンセン病村に在住する元患者の処遇問題が取り残されており、今後の課題となっている点が明らかとなった。また、元患者の子どもたち20名に対して調査を行い、その結果、対外的な関係において自分がハンセン病元患者の子どもであるということから、学校や職場において何らかの被差別経験を有するということが明らかになった。
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