本研究の対象とするベトナムではハンセン病の感染率は人口一万人あたり0.06人(2006)とWHO(世界保健機構)の制圧目標を達成しているが、ハンセン病専門治療施設やハンセン病村では身体障害や後遺症などによって社会復帰が困難となったハンセン病元患者が多数存在している。そのため、平成23年度8月にベトナムのハンセン病専門治療施設2ヵ所においてハンセン病元患者の生活の質(Quality of Life)に関する調査を実施した(N=65)。対象者の平均年齢は57.6歳で衣服の着脱や入浴など身辺自立は高く、また100メートル程度の歩行は可能であるが、階段の上り下りなど上下の移動に困難を感じているという結果となった。現在の健康状態については対象者の53%が「健康である」と回答しているが、将来の健康状態については全体の63%が悪くなると感じている。全体の4割以上が活力を感じているが、精神的な問題によって日常活動が妨げられていると感じている割合も一定数存在していた(35%)。健康上の理由による人間関係の制限があったとする回答は全体の22%程度である。以上の結果から、ベトナムの元ハンセン病患者の場合ある程度の身体的自立は維持されているが、少し重いものが持ち上げられないなど身体障害や後遺症などの影響で身体能力が制限されている面がみられた。また将来の健康に対する不安が高いこと、常時ゆううつさを感じていると推測される層が一定数存在することから、精神的面および将来の健康不安に対するサポートが必要であると考えられる。
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