<1 本研究の目的>:日本人とアメリカ人による国際結婚家庭(以下、「日米国際結婚家庭」)において、異文化出身同士の夫婦の文化がどのようにぶつかり合い、新しい庭秩序が創出されるのか、そしてそのプロセスにおいて個人と家族はどのような心理的発達・変容を遂げるのかを明らかにすることである。 <2 2009年度の調査の目的>:在米の日米国際結婚家庭の家庭秩序と個人と家族の心理的発達・変容を理解するために、親子のペアデータを収集した。さらに、メゾ・マクロ要因を抽出するために、居住地域と学校でのフィールドワークを実施した。 <3 2009年度の調査のプロセス>:アメリカ国内で地域人口に占める国際結婚率が最も高い地域の一つといわれるオレゴン州ポートランド市近郊にて、夫アメリカ人・妻日本人夫婦約20組に対して、住環境・地域環境・子どもの学校環境および家庭内の親子の相互作用についての聞き取り調査を中心としたフィールドワークを行った。さらに新たなフィールドとして、日本語専攻の高校(公立校)と大学・International School(私立校)を開拓し、フィールドワークを行った。 <4 2009年度の調査の意義と重要性>:(1)本研究の最大の意義は、調査中の対象者と調査者の相互作用を通じて、調査者が対象者にデータ解釈を提示してその妥当性を問うことである。これにより、対象者の視点を含んだ分析が可能になった。(2)親子のペア・データの収集により、家庭秩序を構成する要因と、子どもの文化的アイデンティティの形成プロセスが立体的に明らかになった。(3)公立校と私立校のデータを比較検討することにより、家庭の社会経済的状況の違いが、夫婦関係のあり方と子どもの文化的アイデンティティのあり方に影響を与える要因の一つであることが示唆された。
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