本研究は,小規模校に伝統的な一斉画一式授業とは異なるオルタナティブな教育方法を導入することにより,僻地の小規模少人数学級の学習効果を高められることを実証するねらいをもってスタートした。最終年度の今年度は,これまでの北欧諸国の過疎地域での事例に加えて,ニュージーランドの学校にも追加取材した。これにより,オルタナティブな学習スタイルを理論化し,その理論を小規模校において実践に応用するための要件を検討した。また,インドネシアの僻地校と長野県内の僻地校の調査もふまえて,小規模少人数学級ならではの教育方法を実践するための要件を抽出した。特に,小規模校同士の学校統廃合を経て平成24年4月に小中一貫校を設立した信濃小中学校(長野県)に指導講師として関わり,僻地校が抱える教育課題を総合的に捉え直したことで新たな分析観点を得ることができた。また,今年度開発段階に入った個別学習評価システムは,地域の素材を生かした授業づくりとその学習評価をサポートするものであり,同時に子ども一人ひとりの学びの履歴を長期的にデジタル管理できるしくみである。 今後ますます進行する少子化によって,将来の学校像,授業観などが見直され,小規模校の利点を活かす教育が求められることが予想されるが,本研究では過疎化が進行する僻地の学校教育の質を高める手段としてのオルタナティブな教育方法を各地の実情に合わせて試行錯誤してきた。地域の素材を活かした教材を活用し,一人ひとりの個性や学習意欲を重視した学習スタイルを学校現場の実態に即して具体化した。その最終目的は学習意欲を高めて自己学習能力を高めることであり,そのためには教育課程の編成段階から学年枠を柔軟に乗り越え,学習集団を学級集団として固執することなく,教育内容に応じて柔軟にグループを編成し,教育内容もある程度子どもに選択権を与えることが重要であることを明らかにした。
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