平成23年度は、前年度までの異年齢学級編成の長い歴史をもつ実験校の実践検討に続けて、近年新たに展開された異年齢学級教育(フレネ教育と言われることが多い。)の事例を検討した。とくにフランスにおける教育方法革新の取組について、コミュニティとの関係を基軸に、異年齢教育の意義・効果について考察した。さらに、連携研究者の協力のもと、ドイツや日本の異年齢教育の実践との比較検討を行った。実施内容は以下の通りである。 1. 異年齢学級教育とプロジェクト学習に関するフランスと他国の状況や動向(ドイツ・日本・ユネスコ調査)との比較検討会を2回(8月、12月)実施した。 2. フランスにおける異年齢教育の実践について新教育運動の系譜からその全体像を俯瞰するとともに、その教育方法の効果関する研究動向を検討した。その成果を教育方法学会で発表した。 3. フランスから研究協力者、イヴ・ルーテル氏(リール大学教授)とファビアンヌ・ビュロー氏(初等学校教諭)を招聘して、異年齢教育の意義と効果に関する研究会を開催した。一つは、「大学と学校現場との連携について―フランスのフレネ教育実践を通して―」(場所:広島大学)と題する研究会で、具体的な実践例をコミュニティとの関係および大学との連携の視点で議論した。もう一つは「幼児期から児童期への連続した学びと育ち―フランスの事例に学ぶ異年齢教育の方法―」(「2012年度西九州大学子ども研究ネットワーク研究大会・国際セミナー」として実施)というテーマで、フレネ教育方法とその効果およびその具体的な教育方法を検討した。 4. 最終年度にあたり成果報告書の作成を進めた。これはフランス調査の結果及びユネスコ調査の報告のまとめに、ドイツ及び日本との比較を加えるもので、現在作成中である。さらに2013年度のうちに、『異年齢の学びと協同(仮題)』として刊行する予定である。
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