本年度は、昨年度に引き続き、ブレア政権成立以後を中心に、政策に関する分析軸をめぐる議論についての理論的検討、研究対象期間における保健・医療政策についてのデータの収集、英国の政策・政治における選択に関わる歴史的資料の収集を実施した。研究課程において、英国政治の背景・文脈をふまえることの重要性が明らかになってくる中で、英国政治・歴史一般の代表的研究等も収集・検討した。 具体的には、近代以降の英国の医療政策の展開についての主要文献の整理、争点としての「患者の選択」についての多様な観点からの論点の整理、政策分析についての方法的検討(政府文書、各種報告書、マスメディア情報等)をすすめ、データベースの構築をすすめるとともに、ワーキングペーパーとして発行する準備をすすめた。 一方、今年度は大学の研究者を中心に本研究に関わる情報収集を行った。近年の政策形成に直接関わっている諸団体についての情報収集を行った。同時に、キングズファンド等の図書館を中心に、業界雑誌など現地資料の分析を行うとともに、NHSに関わる映像資料も入手し、検討した。一方、医療政策に関する議論が、いっそうグルーバルなコミュニティで議論される現状をふまえつつ、米国・オランダ等での議論を収集・検討するとともに、選択と対立する場面も想定される権利概念についても検討した。 このような作業の中で、研究成果として近年の制度的変更・政策について概観する論文(「ブレア政権下のNHS改革-構造と規制の変化」)をまずまとめた。
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