研究分担者 |
藤田 清士 大阪大学, 大学院・工学研究科, 講師 (00283862)
小川 康雄 東京工業大学, 火山流体研究センター, 教授 (10334525)
上嶋 誠 東京大学, 地震研究所, 准教授 (70242154)
大森 聡一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (90267469)
山本 伸次 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 研究員 (30467013)
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研究概要 |
平成20年度の研究成果は,長基線地電位差観測の確立・岩石熱力学理論計算と室内実験による電気伝導度理論モデルの推定・現在の大陸上部マントルの炭素残存量に関連した原生代の大陸上部マントルの脱CO_2量の見積もりである. 長基線地電位差観測の確立では,砂漠地帯(気温40-60度)での長基線(1km)電場測定に耐え,定常観測点並みの長期間観測(3,4ヶ月以上)でも無保守の観測システムを,安価に実現した.設計段階で3度に渡って業者と十分な議論を行った為,平成20年10月の1ヶ月間のテスト観測と平成20年11月から現在までの本観測で全くトラブルが発生していない.今回の長期間無欠測のデータ取得により,オーストラリア100km〜400kmの上部マントル深部の電気伝導度構造解明が初めて実現可能になり,重要な成果である. 電気伝導度理論モデルの計算では,Perplexプログラムにより,マントル捕獲岩から推定されている大陸上部の化学組成から鉱物量比を計算し,その鉱物量比と室内実験による鉱物の電気伝導度測定値を用いて大陸上部マントルの標準電気伝導度理論モデルを計算した.計算結果は,カナダ楯状地の上部マントル電気伝導度観測モデルよりも明らかに電気伝導度は低いことが分かり,作業仮説である石墨が大陸上部マントルに存在する可能性が高くなった. 原生代の脱CO2問題では,大陸上部マントルを構成するチャノッカイト等の超高温変成作用の岩石熱力学計算を行い,原生代にチャノッカイト等が超高温変成作用で分解し6xlO^<16>〜3xlO^<18> mol/100万年のCO_2が1000万年の間大気中に放出されたという計算結果を得た.原生代後期からはさらに水の作用による大陸上部マントルの脱CO_2が始まったとされ,今回の計算結果に加えてその寄与を見積もり,最終的に現在の大陸上部マントルに残存する炭素量に束縛を与える予定である.
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