研究概要 |
【野外調査】当年度は,夏と秋にモンゴルのハンガイーヘンテイ帯(後期古生代付加体)における野外調査を実施した.それぞれのメンバーは以下の通りである. 夏(7月22日〜8月12日):束田,大藤(富山大学),栗原(新潟大学),セルスマ(モンゴル科学技術大学),上久保(名古屋大学),大音(富山大学) 秋(10月15日〜22日):足立,セルスマ,ミンジン(モンゴル科学技術大学) 当初は全員で調査を行う予定であったが,夏調査直前に勃発した暴動騒ぎのため,調査を2回に分けざるを得なかった.夏隊は,ハラホリン地域でエルデンツォグト層の地質構造解析と微化石解析用試料の採取を行い,さらにバヤンホンゴル・ウランバートル両地域で同位体年代測定用花崗岩試料の採取を行った.秋隊はウランバートル地域で石炭系アルタンオボー層の堆積学的調査を実施した. 【室内実験】モンゴルで採取したデータと試料を日本に帰国後に解析した結果,以下のようなことが判明した. 従来,モンゴル中央部に位置するハンガイーヘンテイ帯(東西1200km,南北600km)は,東西方向の軸を持つ大褶曲構造をなす可能性(褶曲モデル)が指摘されていたが,少なくともハラホリン地域のエルデンツォグト層の地質構造は,褶曲モデルと調和的ではないことが明らかとなった. ハラホリン地域のエルデンツォグト層について微化石の検討を行ったところ,デボン紀の放散虫化石を得た.この地域から微化石が見つかったのは初めてであり,ハラホリン地域のエルデンツォグト層がゴルヒ層に対比される強い根拠となる. バヤンホンゴル・ウランバートル両地域の花崗岩類について年代測定を行ったところ,従来知られていないオルドビス紀の花崗岩を発見した.後期古生代付加体(ハンガイーヘンテイ帯)に付随してオルドビス紀の花崗岩が分布することは,ユーラシアのテクトニクスを考える上で非常に重要な知見である.
|