研究概要 |
本研究では,これまでの研究をさらに進め,"モンゴル-オホーツク海"の実体と,その形成-閉鎖史の解明を目指す.本目的に資するため,平成22年度は8月~9月にかけて延べ40日間,モンゴルでの現地調査を実施し,その後日本国内で採取試料の解析を行った.その結果,ウランバートル周辺に広く分布する石炭系整然層について,その分布域の南部約三分の一が付加体のゴルビ層に帰属する可能性が高いことが明らかとなった.このことは,両者(付加体と整然層)関係を考える上で重要な事実である. また,ハンガイ・ヘンテイ帯の付加体に発達する脆性~延性剪断帯の構造解析を行ったところ,ハンガイ・ヘンテイ帯の剪断帯は以下の3つに区分できることが明らかとなった.(1)同帯北部のtop-tothe Northセンスの剪断帯.低角~ほぼ水平の面構造を持ち,434と462Maのシンテクトニックな深成岩類に貫入されている.また剪断帯には,277Maの花由岩礫が含まれる.この事実は,この剪断帯は,少なくともシルル紀以前とペルム紀以降の2回の剪断運動を経ていることを示唆する.(2)同帯北部のNEトレンド・右横ズレ剪断帯.(3)同帯南部のNEトレンドの左横ずれ剪断帯.この剪断帯は314と278Maの花崗岩類に貫入されており,剪断帯(1)によって切られている.このことより,同帯では以下のような地史が考えられる.【シルル紀】top-to the Northセンスの運動が大陸縁(ハラア層群)に沿っておこった.【デボン紀~石炭紀?】大陸下に海洋プレートが沈み込み,付加活動が継続した.【後期石炭紀】左横ズレ運動が付加体(ハンガイ・ヘンテイ帯)の南縁に沿っておこった.【ペルム紀以降】top-to the Northセンスの剪断運動が付加体北縁に沿っておこり,上記の左横ずれ剪断帯を切った.結果として,ハラホリン断層に沿った「ウランバートルテレーンとツェツェルレグテレーンの重複」がおこった.
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