研究概要 |
南半球のニュージーランドにおける野外調査は河川水が最も少ない3月に行った(現地の共同研究者J. Crampton, B. Field,日本側は代表者の他に連携研究者の福士圭介(金沢大)及び研究協力者の高丸涼(金沢大学生)の計5人が参加).3月までは,関連研究レビューや日本における対応する地層に関する資料調査及び白亜紀に関する国際会議参加等を通じ情報収集に努めた. 調査は3/15-3/29までの14日間,現地に滞在して行った.モトゥ川上流の(1)マンガオタニ第一;(2)マンガオタニ第二;北島最南部の(3)グレンバーン;南島の(4)マルボロ地区クラレンス,の4セクションを調査した.1のセクションはセノマニアン/チューロニアン(C/T)階境界を含むと考えられ,またニュージーランドの年代層序学における模式地でもあるため,詳細な試料採集を行った.イノセラムス種の漸移的な入れ替わりが確認された.新しいイノセラムス種は他地域で進化してニュージーランドに進出したものではなく,この場で進化したことが推定できる.これと同時に赤色層が形成されていることは,海底の環境の変化とイノセラムスの進化の関連を示唆する.このセクションでは1〜1.5m間隔で泥岩試料を採取した.2のセクションはチューロニアン階中部と考えられ,非常に特徴的な赤色層であり,大型化石は産しない.これも赤色層の形成と海底環境の変化との関連を示す.ここは約100mの範囲から5m程度の間隔となるよう20試料を採集した.3のセクションは海岸に連続露出するC/T境界層であり,1とほぼ同じ層位範囲にあたるが堆積水深はやや浅いと推定される.25試料(約2m間隔)を採集した.4は2とほぼ同じ層準だが,やや浅いと考えられ,赤色層は存在しない.しかし大型化石は2と同様産出しない.このことは海底の水質変化と生物への影響を考察する上で重要な知見であった.
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