研究概要 |
21年度はニュージーランド(NZ)における河川水が少ない3月に地質調査を行った(現地の共同研究者J.Crampton, B.Field,日本側は代表者の他に研究協力者の沖野遼(金沢大学生)の計4人が参加).3月までは前年度採集試料の有機炭素同位体比,バイオマーカー分析を行った. 昨年試料の分析の結果,従来大型化石から推定されていたセノマニアン/チューロニアン(C/T)階境界は正しくないことが明らかになった.従って同境界の位置を正しく決めるために前年調査した層位範囲を更に広げて調査した.また,前年調査したソウピットガリーでは炭素同位体比の正のエクスカーションが,「大型化石無産出帯」に確認できた.この層準はマンガオタニ川の調査地では特徴的な赤色層に対比される.その赤色層のバイオマーカー分析を行ったところ,ホパン類,ステラン類はその下位の灰色層と殆ど同様のフィンガープリントであったものの,陸上植物由来のn-alkanesのみが欠落していた.世界の他地域とは異なる特異な陸域環境がこの時代(おそらくC/T境界に対応)に発達したことが示された.西太平洋の南半球高緯度のNZと北半球中緯度の北海道蝦夷層群との比較研究が重要である. 上述の結果を踏まえ,地質調査は3/15-3/20までの15日間,現地に滞在して行った.モトゥ川上流の(1)マンガオタニ第一;南島の(2)マルボロ地区オーズ・ニッド川;および(3)オーズ・ニッド川流域のソウピットガリーの3セクションを調査した.1ではC/T境界と考えられる赤色層よりも上位を,コニアシアンと推定される層準まで試料採集した.2ではセノマニアン階の中・上部を採集した.この調査中に大型魚竜らしき脊椎骨の密集ノジュールを発見し,採集した(GNSに所蔵).3はC/T境界付近と考えられるため,欧米の炭素同位体比曲線との詳細対比を目指して詳細な試料採集を行った.
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