研究概要 |
これまでのところベトナム・ハノイ市南部地域において、民家・公共施設の井戸水を20ヶ所でサンプリングし、全砒素、3価砒素、全鉄、マンガン、ORP等の測定を行ったところ、ベトナムの水質基準である10μg/Lを超える砒素濃度が15地点で検出された。また、基準超過地点での全鉄(mg/L)/全砒素(mg/L)の濃度比は平均445で、砒素に比して高い濃度の鉄を含有することから、同地域で鉄バクテリア法による砒素除去に適した条件が広く存在することを確認した。この中で砒素濃度75μg/、鉄/砒素濃度比148(いずれも5回採水の平均値)の地点(Tu Nhien kindergarden、Thuong Tin District、Hanoi)を選択、日本と同様なパイロット試験プラントを現地で製造して設置、2009年11月より運転を開始するに至った。運転開始後の原水の平均水質は、全鉄、全砒素、マンガン、アンモニア性窒素についてそれぞれ10.4、0.060、0.20、2.3mg/Lであった。ろ材には、周辺地域で産するレンガを粉砕して粒径2-3mmとなるようにふるったものを使用し、ろ材高は約1m、原水を落水曝気後(溶存酸素濃度平均4。2mg/L)LV150m/dayで通水した。 全砒素の平均除去率は,87.5±3.1%という結果となり,ベトナムにおいても砒素除去のための鉄バク法が有効であることが判る.ただし,実際に運転・点検を開始してみると,2009年11月4日から2009年12月16日までの通水期間45日のうち,停電により通水が停止していた期間は約17日あり,全運転期間の3分の1程度は運転が停止する状況であった.その他にも,高濃度の鉄による目詰まりが起こりやすく,また,ろ材比重が重いため,逆洗時のろ材展開が不十分となる傾向がみられた.また、アンモニアの硝化には溶存酸素濃度が相対的に不足しており、また逆洗の不十分もあってマンガン酸化が立ち上がるに至っていない。今後のベトナム農村部における展開としては,ポンプの動力源としてバイオガス発電等からの電気の供給と簡易水道としての上水供給をセットで計画することが有効と考える.
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