研究概要 |
本研究は(A)考古試料のその場分析に最適なポータブル蛍光X線分析装置を開発し考古学の研究に寄与することと、開発した装置を用いて(B)文理融合型研究により地中海・西アジア地域と東南アジア、東アジアの遺跡出土ガラスを分析し、分析データと様式学的知見をもとに交易ルートを実証し、西域と東洋との物質文化の東西交流を解明することを目的として研究を進め(A),(B)以下の成果が得られた。 A)本年度はポータブル蛍光X線分析装置に改良を加え、従来総重量25kgの装置を、今回18kgまでスリム化し、可搬性を高めることができた。また、CMOSカメラを搭載し、試料測定点が観察できる機構とした。これにより、2mm四方程度の領域の分析がピンポイントでできるようになったことから、微細な試料や複雑な文様の分析で、測定点を正確に定めることができるようになった。B)本年度は以下の調査地域もしくは博物館・美術館等にそれぞれ1週間〜1ヶ月滞在し、開発した分析装置を用いて、現地でガラスおよび陶磁器の分析を行った。なお、考古学的・様式学的研究は分担者の真道洋子が担当した。 1)国内:東地中海、シリア、中国、日本の古代ガラス、MIHO Museum,日本の中世のガラス、一切金字経、中尊寺。2)国外:ザダール考古博物館、ドブロブニク博物館(クロアチア)、Deir az-Zor考古博物館(シリア)、・中国広西省文物考古研究所(中国)、トルコ・カマンカレポユック遺跡、アブシール南丘陵遺跡(エジプト)、ラーヤ遺跡(エジプト) 主な成果としては、カマンカレホユック遺跡出土方形ビーズが、BC16,15世紀頃のものでメソポタミアから搬入品であることを、現地での分析とMIHO Museumの資料の分析結果から明らかにした。また、クロアチアとシリアの出土ガラスの分析から、ローマ時代における交易の存在を示す知見が得られた。
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