研究課題
1)装置開発 昨年に引き続き、既存のポータブル蛍光X線分析装置に以下の改良を加えた:これまで総重量が25kgあり、飛行機への機内持ち込みの際負担となっていたが、今回コントローラと電源の改良により18kgまでスリム化し、可搬性を高めた。また、C-MOSカメラを導入することにより、測定点を観察できるようにしたことで、試料の特定の場所をピンポイントで分析できるように改良した。2)分析調査i)滋賀県MIHO Museum収蔵品の分析を行い、古代エジプト、メソポタミアのガラスの特性化を行った。研究成果は、ギリシャで行ったガラスの歴史国際会議で2件、口頭およびポスター発表した。ii)早大隊のエジプト・アブシール南丘陵遺跡の発掘調査、ドイツ隊のシリア・テルシェハマッド遺跡の発掘調査に参加し両遺跡の出土遺物について現地で多数の貴重な分析データを収集した。前者の成果は、早大調査隊の「エジプト学研究別冊」に23頁の論文として近々出版される。iii)古代の青色顔料の変遷と東西交易についての研究成果を当研究室の阿部善也が2010年1月に開催された放射光学会年会で口頭発表したところ、学生発表賞を受賞した。一方、同研究成果を国際的一流誌Analytical & Bioanalytical Chemistry誌に10頁の論文として発表した。iv)2010年1月および3月に実施した熊本県の4箇所の古墳から出土したガラスの分析調査により、古墳から東南アジア産またはインド産と考えられるガラスが見いだされ、日本に当時両所から伝来していることを明らかにすることができた。同発見は、本科研費の研究の目的である、「海のシルクロード」の実証的根拠となるもので、大きな発見であった。本成果は本年6月に開催の文化財科学会で発表する。
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