研究概要 |
(1)ベトナム(海洋資源研究所Dr van Thuoc)、フィリピン(水産局BFAR)および沖縄(名護市北部海岸)を拠点に海藻、魚介類の収集を行った。 (2)フィリピン産海藻のうち、Sargassum sp, Jania adhaerensで、高濃度のフェノール性臭素化ジフェニルエーテル(OH-PBDE)およびそのメトキシ誘導体(MeO-PBDE)が生産されることが分かった。それらは種特異的であることから海藻に共生するbacteriaの関与が示唆された。 (3)OH-PBDEは魚介類には取り込まれにくいが、海藻(Jania sp)を捕食するthorny oysterに取り込まれることを明らかにした。Sargassum spでは、dihydroxy-PBDEの脱HBr化によってhydroxy-dibenzo-p-dioxinが生成することが推察された。ほとんどの海藻に臭素化カテコールが存在することが明らかになったが、Halmenia durvilaeiでは種特異的に臭素化ヒドロキノンおよびそのmethoxy体が生産されることが分かった。これらの生物濃縮機構の調査は、フィリピンMasinloc海岸の生物環境が最適であると思われた。 (4)沖縄の海藻(Sargassum sp)ではフィリピン産と類似したOH-PBDE成分が検出された。このため日本人血液(京都大学ヒト試料バンク)を分析した結果、6-OH-BDE47および2,2'-diOH-BB80が検出された。これらは食事(海産物)から摂取したMeO-PBDEおよび2,2'-diMeO-BB80の生体内脱メチル化によるものと考えられ、今後、それらの血液残留性とその生成機構の研究を継続したい。
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