研究概要 |
本研究では,海洋砂漠と言われる海洋の栄養塩が少ない海域に栄養分に富む海洋深層水を大規模にくみ上げて,その海域を局所的に富栄養化し,この海域に海洋の森を作る可能性を検討することで,この大規模海洋深層水くみ上げが環境にどのような影響を与えるかを解明することを目的とする.本年度は深層水汲み上げ装置及び計測手法の評価を行い,海洋実験への展開の可能性を検討した.また数値シミュレーションによって深層水の表層拡散現象のシミュレーションを行い,実験的には実海洋で湧昇実験を行った. 具体的には,マリアナ海域沖での中長期漂流実験に向けて,昨年度製作した実験装置及び計測手法の検討を行い,実験装置及び計測システムの信頼性を確認した.この装置を用いて海洋フィールド実験を行い,単独パイプを用いて,湧昇流の速度,流れの様子,栄養塩の検出等の深層水汲み上げ技術を耐水圧カメラ,デジタルビデオカメラおよび各種センサーを用いて観察し確認した.この結果,パイプ内部での逆流量を評価し,またパイプ破損時の表層水混入時における湧昇可能性を定量的に評価した.また,単独のパイプについて,汲み上げられた深層水の表層近傍での拡散流動現象を,スーパーコンピュータを用いた数値解析によって行い,海洋への影響を評価した.これらの知見をもとに,海洋における深層水の拡散とパイプ群の挙動を数値シミュレーションを通して流体力学的見地から検証した. また,次年度実施予定のパイプ長期繋留実験に向けて,500mにも及ぶパイプをどのようにして海洋に展開するかの検討を行った.複数案を設け,実際に船舶との兼ね合いから妥当なものを選択し,具体的な実験規模を検討した.
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