中国黄土高原においては、雨等によって浸食された黄土は周辺河川に流入するだけでなく、砂漠化のもたらす細粒分が空気中に飛散し、日本においても多大な環境負荷を与えている。中国黄土高原における土地利用を促進し、浸食によりもたらされる環境負荷を低減するために、以下のような研究を実施した。 中国黄土高原の広域的な地形変動を計測するため、陸域観測技術衛星だいち(ALOS)が具備する光学センサPRISMのステレオ3方向視データを用いて、3次元情報を持つGISの基図データを蓄積した。さらに、数cm精度で変状を高頻度に計測するため、合成開口レーダPALSARのデータを用いて干渉解析技術を高度化した。 また、黄土高原の浸食抑止のために、ジオシンセティクスと現地発生土もしくは現地岩石を使用した環境共生型斜面防護工を提案した。提案した環境共生型斜面防護工は、施工に際して大型重機を必要としない環境負荷の小さい構造体である。ここでは、斜面防護工の性能を調査するため、モデル実験および数値シミュレーションを実施した。 本研究では、衛星データを活用した動的GISのプロトタイプにより、黄土高原の地形変状だけでなく、どのような地形であっても広域の変化を継続的にとらえ、さらに合成開口レーダのデータを解析することにより、局所的な変形を把握できる技術を開発した。また、本研究で提案・開発した環境共生型防護工は、構造体に必要な材料、地形的要件等の検討を行うことで、土砂移動だけでなく、落石等の対策にも応用できた。
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