研究概要 |
H21の作業はメキシコシティー盆地中央部において地盤調査を実施し,堆積環境を考慮した地盤特性の把握を行い,盆地中央部および盆地縁部の工学的物性の違いを明らかにすることである。特に,変形特性試験において,剛性率および減衰定数のひずみ依存性を明らかにする。 H21の地盤調査はメキシコシティー盆地中央部において,表面波探査,常時微動測定および微動アレイ探査を行うとともに,土のサンプリング,静的コーン貫入試験および原位置ベーンせん断試験を行った。サンプリング試料に対して,土の物理試験,室内ベーンせん断試験,一面せん断試験,三軸試験および圧密試験を行った。また,堆積環境を明らかにするために,年代測定,珪藻分析,X線回折試験,塩化物含有量試験や強熱減量試験を行った。室内試験の結果,メキシコシテー盆地中央部の土質特性は,塩分濃度が5~9%と海水の約2~3倍あること,間隙比が10以上あること,pHは9.5~10あること,有機炭素含有量が5%程度あり,メキシコシティー盆地縁部で行った調査結果と大きく異なっており,同じメキシコシテー盆地の中でも場所によって土質特性が大きく異なっていることが分かった。盆地中央部の土の堆積環境は,珪藻分析結果から淡水に堆積したことが分かっているが,土の塩分濃度が海水よりも高い理由として,灌漑による人為的な条件と強烈な乾燥条件のもとで,土中の水分が失われ塩分濃度が高くなっていったものと判断される。次に,メキシコシティー粘土の剛性率は,ひずみレベルが1×E-01になっても85%程度にしか減少していないことが分かった。また,減衰定数についても同様なひずみレベルにおける値が2%でしかない。同ひずみレベルにおける我が国の海成粘性土の剛性率は5%程度に減少し,その減衰定数は20%程度であることを考えると,メキシコシティー粘土の動的特性は,我が国のそれと比較すると大きく異なっていることが分かる。この結果から,メキシコシティー粘土は減衰しにくい土であり,地震時には地震動の影響が長く続くことが示唆される。
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