本研究の目的は、バングラデシュ村落部において地下水中ヒ素による健康被害を軽減させる手法を考察することである。 その目的のため、平成24年度は9月及び12月にそれぞれ現地調査を行いさまざまなヒ素対策手法の普及に関する調査を試みた。すなわち平成24年度は、過年度に行ってきたヒ素除去装置の普及手法の検討に加え代替水源として表流水や雨水等を消毒して飲料水として用いることができる紫外線殺菌装置の普及に関する研究も行った。 具体的には岩崎電気(株)製の小型紫外線ランプを小型ウォーターサーバーや100L程度の水タンクにセットし、その微生物殺菌効果を簡易分析キット等を用いて調査した。 この調査においては、ヒ素対策装置を普及させるためのビジネス化まで視野に入れており、技術が住民にいかに受け入れられるかの経済学的・社会学的調査も合わせて行った。すなわち今年度の調査は装置に対する住民の支払い意思額や製品としての紫外線殺菌装置の設計、飲料水の製造会社の訪問調査によるボトル水の供給の現状調査、村落部および都市スラム住民の水使用状況の調査など多岐にわたっている。 その結果、ヒ素汚染した地下水の代替水源として用いられる雨水や簡易水道水等は微生物汚染があり、そのままでは飲料に適さないが紫外線殺菌により微生物汚染は解消されることが明らかになったが長期間殺菌灯を使用した場合の安全性などには課題が残った。 本年度の研究の成果は著書「国際開発と環境 アジアの内発的発展のために」の中で「バングラデシュにおけるBOPビジネスと内発的発展」としてまとめている。
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