研究概要 |
本年度は,いわゆる「インド洋西海域世界」を形成してきた地域を広範に踏査し,港市の全体像を把握することを目的とした。具体的にはインド・カッチ地方,東アフリカ・アラビア半島沿岸および周辺地域における臨地調査と,英国における資料収集調査を計画し,イエメン,オマーン,インド,イランにおいて臨地調査を行った。イエメン・オマーン調査(2008/7/19〜8/9)では,ホデイダ,モカ,アデン,ムカッラ,マスカト,スール等の港市およびサナア,ハドラマウトなどの内陸都市の空間構成に関する調査を行い,イエメンのムカッラとオマーンのマスカトでは,施設分布,建築構法,様式等に関する悉皆調査をおこなった。インド調査(2008/8/16〜9/2)では,カッチのマンドヴィでの都市悉皆調査の他,グジャラート沿岸のキャンベイ,バルーチ,スーラト,ダマン等の港市の調査をおこない,ダマンでは旧市街の施設分布,街区構成等に関する悉皆調査を行った。イラン調査(2009/2/28〜3/21)では,ペルシア湾岸のデイラム,ゲナヴェ,ブーシェフル,カンガン,シーラーフ遺跡,レンゲ,コング,キシュ島,バンダル・アッバース,ケシュム島,ホルムズ島,ミナーブ等の港市の調査を行い,ブーシェフル,カンガン,ケシュム島において,現地行政機関より入手した詳細な地図に基づき,街区構成,施設分布等に関する悉皆調査をおこなった。調査により,対象地域の港市の地理的,地政学的特性や,内陸の支配権力との歴史的関連性,生態的環境と建築工法・様式との関連性等について,地域的差異を含めて把握することができ,また現在も機能するいくつかの主要な港市の空間特性に関するデータの収集ができた。時間的予算的制約から,今年度は英国における地図資料等の収集調査を行えなかったが,21年度に実施したいと考えている。
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