研究概要 |
本年度は,20年度には踏査できなかった,インド,マラバール地方の港市について広く踏査することにより,「インド洋西海域世界」の港市の全体像を把握することを一つの目的とした。また,マラバール地方,東アフリカ沿岸部,ペルシア湾岸の各地域において,歴史的,都市構成的に重要と考えられるいくつかの港市に焦点を当て,その都市形成,都市空間構成,居住空間の構成などを詳細に調査することをもう一つの目的とした。インド,マラバール地方では,2009年9月に臨地調査を行い(9/1~21),クイロン,コチン,カリカット,マンガロール,バトカル,ゴア,ダボル,ジャンジーラなどで都市構成に関する調査を行った。2009年12月(12/20~1/2)には,マラバール地方のカリカットにおいて,都市形成に関する資料収集をおこない,クティチラ地区において,施設分布,街区構成,コミユニティ分布,住居の空間構成,建築構法等に関する悉皆的調査をおこなった。カリカットとインドのグジャラート地方やアラブ地域,特にイエメン,ハドラマウト地方との歴史的交流が明らかになったほか,母系制に基づく大家族が居住する,タラワードと呼ばれる独特な伝統的住居形態や,倉庫,事務所,住居の機能が一体となったパンディカシャラと呼ばれる住居形態について明らかにすることができた。2010年3月(3/1~17)には東アフリカ沿岸地域のザンジバル島(タンザニア),ラム(ケニア)において,カリカットと同様の悉皆的調査を行い,インドのカッチ地方出身の商人が建てた建築,住居に関して,その空間構成,建築様式などを明らかにし,インドと東アフリカ沿岸の港市の密接な結びつきを確認することができた。
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