研究概要 |
20年度、21年度においては、「インド洋西海域世界」を広範に踏査し、対象海域における港市の全体像を把握するとともに、東アフリカ沿岸のザンジバル、ラムおよびインド、マラバール地方のカリカットにおいて、重点的な悉皆調査を行った。本年度は、そのような重点的悉皆的調査を継続することを調査の主たる課題とし、インド、グジャラート地方の歴史的港市キャンベイ(2010/8/16~9/6)、および同じくグジャラート地方のカーティアワール半島に位置するソームナート・パタン、マングロール(2010/8/31~9/18)において、施設分布,街区構成,コミュニティ分布,住居の空間構成,建築構法等に関する悉皆的調査をおこなった。キャンベイにおいては、ヒンドゥー教徒、ジャイナ教徒、ムスリムが混在する街区の構成が大変興味深く、中でもインド洋交易において重要な役割を果たしたシーア派に属するムスリムであるボーホラー・コミュニティーの居住区について、街区構成や住居に関する詳細なデータが得られたことは大きな成果であった。9月にはロンドンのBritish Libraryにて、インド洋海域世界における港市の歴史地図資料の収集を行った。主としてポルトガル、オランダ、イギリスによって作成された主要港市の地図、絵図等は、17世紀以降のインド洋海域港市の空間的変遷を知る上で貴重な資料である。また本年度は、これまでの研究成果を積極的に学会等で発表するとともに、インド、カッチ地方の港市に関する研究成果を英文でまとめ、「Reports on the Architectural Heritage of Bhadreshwar, Mundra and Mandvi : Studies on the Port Cities of Kutch, Gujarat」と題した報告書を刊行した。
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