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3カ年の初年度にあたる平成20年度は、王家大院の建築的特色を探ることを目的として、9月に中国山西省霊石県の現地でフィールドワークを実施した。具体的には、主として東側の高家崖エリアにおいて、立面の実測および建築彫刻の分布の記録、天井(中庭)寸法・比例に関する調査、土地神などの小祠の配置に関する聞き取り分析、排水システムの調査を実施した。
今回の調査から、(1)王家大院の天井(中庭)は間口が狭く、奥行き方向に細長いプロポーションを基調としていること、(2)排水は、雨水などを院落外にすぐには出さず、いったん中庭に集めてから敷地勾配に沿って通路ないし排水溝により下手側の院落へ流すシステムになっており、風水思想との関連が想定されること、(3)山西省の主要な大院における院落の配置構成では、中央東西に通路を設置して北側の院落を優位に、南側の院落を劣位に位置付けるものがほとんどであるが、王家大院はこれらのルールが明瞭に当てはまらない特殊事例だと考えられ、おそらく地形の制約が大きいことによると考えられること、(4)王家大院が所在する静升村では、屋敷に祀られる小祠には天地爺・土地神・門神の3種があり、その配置には数種のバリエーションが認められるが、王家大院にはそのうちの一部のみが存在すること、などがわかってきた。
上記の結果がどの程度の普遍性をもつものかを考察するため、平成21年度は山西省内の類例調査を進める予定である。
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