研究概要 |
本研究では、国内外の湖沼からサンプルを収集し、Microcystis aeruginosaおよびCylidndrospermopsis raciborskii(以下アオコと記述)の個体群の遺伝的多様性とそれらの広域スケールでの湖沼間移動分散の実態解明を行うことを目的としている。本年度は、既分離株の単離作業・遺伝子型の解析及び新たなアオコの採集・単離作業を行った。2009年までに分離した素培養株のクローン化を行い、得られた144株について7つのハウスキーピング遺伝子(ftsZ, glnA, gltX, gyrB, pgi, recA, tpi)の塩基配列に基づく遺伝子タイピング(MLST)を行った。これらの株に遺伝子配列が既知である268株を含めて合わせて412株のデータを用いて系統関係の解析を行った結果、日本の霞ヶ浦水系(霞ヶ浦・北浦、茨城県)固有の新規系統群を発見した。本発見は「微生物は小さく簡単に移動してしまうので地方固有系統群は成立しない」というこれまでの微生物学の定説を覆す重要な発見である。国外は大きな地理スケールでのアオコの移動動態を理解するためにアジア・オセアニアを対象地域としているが、本年度はタイ(バンコク、チョンブリー近郊)及びベトナム(ハティン省)にてアオコの採集を行った。これらの地で採集したアオコを持ち帰り、実験室においてM.aeruginosaを選抜して単離・培養作業を行い、霞ヶ浦より30株、諏訪湖より11株、石垣島より64株、ベトナムより44株、タイより27株の素培養株を得た。さらにこれらの株についてクローン化(単一細胞からの培養による株化)作業を行い、現時点で計19株のクローン株を得た。また、オーストラリアのM.aeruginosaの培養株については、オーストラリア国立自然科学産業研究機関(CSIRO)・藻類系統保存施設のSusan Blackburn博士と協議を行った結果、同施設が管理している約100株を提供していただき、共同研究として上記同様の手法で分析を行うことについて合意を得た。これら菌株が到着次第、解析に着手することになる。
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