研究課題
本年度、国内(琵琶湖、宍道湖等)及び東南アジア(ミャンマー、カンボジア)のアオコサンプルからM.aeruginosaの単離・培養作業を行い、計48株を取得した。これらの株及び昨年度取得した株についてクローン化(単藻化)作業を行い、計65のクローン株を得た。これら65株について、7箇所のハウスキーピング遺伝子座塩基配列を用いて遺伝子タイピング(MLST)を行った。その結果、44のMLST遺伝子型が見出され、このうち39遺伝子型が新規であり、同種が大きな遺伝的多様性を有していることが再確認された。これら新規遺伝子型に既知の237遺伝子型を併せて分子系統解析を行った結果、M.aeruginosaが少なくとも11の明瞭な種内系統グループを含むことがわかった。東南アジア株と日本株はこれら11グループの中に混在したことから、日本と東南アジアのアオコの間の遺伝的な差異が小さいこと、すなわちアオコの移動があることが示唆された。また、遺伝子タイピング及びPCR検出実験によって、この中の1つのグループが霞ヶ浦水系(茨城県)で近年勢力を拡大したグループであることを見出した。アオコ毒素をつくる有毒株は11の中の3グループに偏在したが、今回、これらに属さない「最近有毒化した」と考えられる有毒株を見出した。この株は2010年夏季~秋季に宍道湖で空前のアオコ大発生を起こした遺伝子型であり、その生理・生態的特性については、有毒アオコの大量発生監視という観点から今後詳細な解析を行うなどして注意する必要がある。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
PLoS ONE, 6, e17085(2011)
巻: 6e17085 ページ: 1-7