研究課題
北極・高緯度域は、過去の地球規模の気候変動に関する研究からも明らかなように、温暖化による温度上昇の影響を最も強く受けるとされている。陸地面積の約24.5%を占める永久凍土を含む北極・高緯度域の土壌圏には、過去の地質時代から累々と蓄積されてきたメタンなどを含むハイドレート層や土壌有機炭素が地表面近くに大量に蓄積されている。温暖化の進行は、これら気候変動に脆弱な炭素リザーバーを容易に不安定化させる要因となりうること、また、この結果、温暖化を加速させる正のフィードバックを引き起こす起爆剤となることが懸念される。本研究では、放射性炭素同位体比測定を利用した北極域土壌圏の温暖化影響評価手法の確立を目指し、研究の盛んなスバールバル諸島以外の北極・高緯度地域、特にこれまでほとんど調査・研究の進んでいないカナダ高緯度地域においてfossil carbon分解・放出のポテンシャルを評価し、北極・高緯度地域の土壌圏温暖化影響評価に広く応用可能な評価手法を確立・構築することを目的に海外調査研究を実施する。H22年度は、カナダ北極エルズビア島の比較対象なるノルウェー王国スバーバル諸島(スピッツベルゲン)氷河退行域調査サイトおよびアラスカ北極圏での現地調査を実施した。各現地では、氷河からの距離や植生に応じたトランセクトを設定し、各地点での土壌調査(土壌ガス採取、土壌呼吸フラックス測定)および土壌採取をおこなった。これまでの現地観測で得られた各種試料の測定結果より、各観測点の土壌呼吸速度や土壌特性、微生物群集構造などを明らかにすることが出来た。これらの測定結果は、今後、北極域での温暖化影響評価を行う際の重要なデータセットとして活用できる。
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Nucl.Instrum.Methods B
巻: 268(7-8) ページ: 1120-1124
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