研究課題
本研究は、インド亜大陸および西アフリカ域内の農耕に用いられる在来技術群から砂漠化抑制に有効な技術群を発掘し、西アフリカ・サヘル地域におけるフィールド実証試験を経て、砂漠化対処に有効な実践的技術と水平技術移転アプローチを提案することを目的に実施された。平成21年度は、ニジェール国にある国際半乾燥熱帯作物研究所ニアメー支所(ICRISAT-Niamey)が位置するサドレ地域およびファカラ地域において、前年度に引き続き圃場試験地の設営とモニタリング、休閑植生に影響を及ぼす牧畜民の生業動態調査、「耕地内休閑システム」の村落実証調査、地域住民による外部導入技術の受入と定着に関する聞き取り調査を行なった。一連の調査を通じて、得られた知見を以下に要約する。1)「耕地内休閑システム」による増収効果の持続性:耕地内休閑を行なっだ部分での連続耕作試験により増収効果が少なくとも3年間持続することが確認できた(ICRISATサドレ圃場およびファカラ地域の村落実証圃場での確認)。2)乾季の家畜放牧による耕地内休閑帯の植生バンドの破壊:家畜飼料の乏しい乾季には、耕地内休閑帯での家畜に拠る摂食や地域住民(耕地所有者ではない住民)による草の持ち去りが確認された。このことは、乾季の風食抑制効果の減少につながるが、家畜飼料に乏しい乾季の生計維持行動との折り合いを如何に付けるかを問うものである。3)外部者関与の強度と地域住民による導入技術の受け入れ:外国の研究者や援助機関によるプロジェクトが集中しているファカラ地域とそれとはほぼ無縁のサドレ地域の村落において「耕地内休閑システム」の受け入れ状況を調査した。住民集会や技術研修会(いわゆる動員型の住民参加)による技術導入を行なった前者では、技術の定着率が1桁に留まったのに対し、試験圃場への見学会と外部者関与の少ない意見交換会(住民主導型の参加)を行なった後者ではほぼ全ての参加世帯が適切な技術導入を行なった。このことから、地域住民による「当事者意識の醸成」が導入技術の普及・定着に重要であることと地域開発支援で定番となっている参加型アプローチが対象地域ではリアリティを持たないことが確認できた。4)地域住民間の技術・情報伝播経路の確認:まだ予備調査の段階ではあるが、地域住民間の技術・情報伝播経路として、「親族・家族内の伝播」・「友人・知人間の伝播」・「往還(同一村内、近隣村間、遠隔村間)による伝播」が確認できた。
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Transactions of the ASABE 52 (2)
ページ: 487-492
国際農林水産業研究成果情報 16
Proceedings of 9th International Conference of the East and Southeast Asia Federation of Soil Science Societies
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