研究課題
本研究では、樹上性の巻貝Amphidromus属で、発生の鏡像型と実像型(左右二型)が持続的に共存するメカニズムを検証するために、以下の動態調査、野外実験、試料収集を行った。(1)左右二型が選択的に異型交尾するなら、頻度は1:1の動的平衡に保たれる。だが、頻度が振動すれば、長期的な周期で1:1からずれることになる。これまでの調査期間には、多くの集団で頻度が有意にずれていた。そこで、周期的な振動の有無を検証するための動態継続調査を実施した。(2)右巻に対する捕食圧には、野生集団での実証例がない。そこで、殻の形態、巻き方向、体サイズを共変数としての被捕食率を左巻と右巻の同一集団標本を用いて推定するためのデータを採取した。詳細は以下の通りである。(1)長期動態追跡:毎年雨季に方形区の二型頻度を継続調査し、頻度1:1からの有意なずれが周期的な振動によるか否かを検証するために、同一面積の方形区を東部チャンタブリと南部スラタニで増設し、左右二型頻度の継続調査地点を同年平行調査が可能な数だけ増やすことにより、多数地点での頻度の同年平行変動のパターンの数理解析用基礎データを収集した。(2)進化的起源:分子系統樹によれば、左巻の単系統が分岐したノードのブートストラップ値が57%にとどまる。この二型系統と単型系統の起源、および鏡像進化の系譜を確証するために、調査地域で採集可能な3亜属12種および海外博物館所蔵の他種の組織標本を入手し、現24種に加えた分子系統解析を、核DNA(ITS領域)塩基配列を用いて行った。(4)げっ歯類・鳥類による捕食と巻貝被食者の左右性:これまでの調査により巻貝専食ヘビのほかにげっ歯類および鳥類が主要な捕食者であることを示唆する死殻の標本が多数得られている。そこで、殻の破損パターンを精査し、左右二型に対する捕食頻度の変動、捕食パターンの差異を分析した。
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