研究概要 |
2008年12月から3月にかけて,林冠部分の着生・寄生植物についてのインベントリー調査を行った.調査は,ドイインタノン国立公園の標高1700m地点に設置した永久調査区内の樹高50mの超高木10個体を対象として,すべての太枝と幹に着生している,コケ植物,シダ植物,種子植物を網羅的に採集した.採取標本はコケ植物については,連携研究者の秋山により,種子植物についてはチェンマイのシリキット王妃植物園のスタッフにより同定した.その結果,コケ植物約200種,種子植物40種が出現し,コケには世界的にみて希少な種,あるいは未記載種と思われる種も出現した.種子植物にはドイインタノン固有のランなどが採取されている.シダ植物については,2009年度に同定作業を実施する予定である.今後雨期のサンプリングを実施することで,種子植物の開花個体と落葉性種がさらに採取でき,出現種数の増加が見込まれる. 以上の多様性インベントリーと同時に,生態的な分布調査もあわせて実施した.コケ植物の種間には,着生基質によるすみわけが認められ,ホストとなっている樹種の樹皮の形態が,重要な要因と推定されている.種子植物の着生にはホスト木の樹齢が制限要員となっていると思われ,種子植物の定着の前に,コケ植物が生育基質として利用できる状態になっていることが必須と考えられた. ホストとなっている樹木については,15haプロット内の樹木7万本についての3回目の毎木調査を2009年1月から開始し,3月現在,調査を続行中で4月中に終了する予定である.この調査からは,ホスト木の個体群統計学的なパラメータを推定でき,着生植物の基質の動態推定が可能となる.
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