生物間相互作用は、生物多様性の創出・維持に重要な役割を果たしており、陸上でもっとも生物多様性の高い熱帯雨林で温帯より強い依存関係や特殊化が見られるのは、その傍証であると考えられる。しかし、熱帯林群集の種間関係の構造にどのような特徴が見られるのか、また、その構造の生成要因については、十分なデータがなくほとんどわかっていない。本研究は、ボルネオ低地熱帯雨林における植物-送粉者ネットワークを明らかにし、その生成要因について検討することを目的としている。20年度の主要な成果は次のとおりである。 1)世界の様々な生態系における植物-送粉者ネットワークのデータを整理し、ネットワークは個体数に依存したランダムな相互作用を仮定したものと著しく異なるパターンを示し種特異性が重要なパターン形成要因になっていること、植物と送粉者でパートナーの幅の分布パターンが異なりそれは送粉効率から説明できること、また地理的にネットワークの変異もみられること、などを明らかにした。この成果についてはは論文投稿準備中である。 2)ボルネオ低地フタバガキ林でこれまでに採集された標本の同定、データベース化を行った。ほとんど終了しており、21年度には本格的な分析を行う。 3)ランビル国立公園における林冠観測システムを利用して、さらに送粉昆虫の採集をすすめた。20年度には、アカネ科、カンラン科、ヤシ科などで採集を行い、300個体をこえる訪花昆虫を採集することができた。
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