盛夏に相当する7月下旬から8月初旬にかけて、研究協力者3名がスバールバルに滞在して野外調査を行った。また、同地域の衛星データを入手して解析を行った。主な成果は以下の通りである。 1. 衛星による植物地上部バイオマスの推定および土地被覆分類のアルゴリズム作成・検証のために必要な分光反射率とバイオマス・植生タイプの測定を現地で行った。 2. フェノロジーや物質循環に大きな影響を与える要因である消雪時期と積雪開始時期の年変動を衛星リモートセンシングを用いて調べた。衛星センサTerra MODISによる地表面反射率データを用いて、2000年から2009年までの時系列NDVI画像を作成し、それをもとに消雪時期、積雪開始時期を推定した。その結果、消雪時期については最大25日程度、降雪開始時期は最大15日程度の年変動があり、非積雪期間の年変動は最大で30日程度におよぶことが明らかになった。また、経年変化には統計的に有意な傾向は認められなかった。 3. 植生、温度、土壌水分と温室効果ガスフラックスとの関係を明らかにするため、密閉法を用いて生態系呼吸(CO_2フラックス)、メタンおよび亜酸化窒素フラックスの現地測定を行った。その結果、生態系呼吸はキョクチヤナギの被度と正の相関が認められたが、メタンについては植生の有無に関わらず吸収フラックスであった。亜酸化窒素については、植生の発達程度により放出か吸収かが異なっており、植生が発生量と拡散の物理過程に影響していることが示唆された。
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