研究概要 |
流水性種からみたボルネオ産両生類多様性の起源を探るため、平成21年度もマレーシア領のマレー半島とボルネオ島のサラワク州において野外調査を続行した。得られた標本や組織サンプルから系統分類学的な解析を行ったところ、主に以下の成果が得られた。1)ウデナガガエル属の各種の標本を山地渓流において採集してミトコンドリデDNAの塩基配列をもちいた分子系統解析を行った。その結果、ボルネオ島産の種は近隣のフィリピン産と姉妹関係にある群に代表され、一部がやマレー半島にも分布するが、分断の歴史は古いこと、ボルネオ島内に未記載の隠蔽種が存在することが明らかになった。この成果は専門誌に投稿し,現在印刷中である。2)ホソウデナガガエル属について、昨年度よりさらに多くの地点からのサンプルを入手して分子系統解析を行い、ボルネオ島産は大陸産とは独立の系統であること、未記載の隠蔽種が存在することを確認した。3)サバ州産のボルネオハヤセガエル属の形態学的、分子系統学的解析結果から、1新種をZoological Science誌に記載した。4)また、マレー半島南部のチョボクチガエルは、これまで広域分布種の一部とされてきたが、未記載の隠蔽種であることを音声学的、形態学的、分子系統学的に確認した。4)ボルネオ及びマレー半島産のアシナシイモリ類の追加標本の採集に成功し、現在、分子系統解析を行っている゜半島部の複数の地点で2種が同所的に生息していることは、ますます確実になっている。5)サラワク州のクバ国立公園で、現在ボルネオヒメアマガエルとされている種が大小2種からなし、繁殖生態が大きく異なることを発見した。1種は未記載の新種となる。6)これまで無視されてきた、マレー半島の両生類相の固有性の高さについて総括し、学会発表した。
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